蓼科山365日 10-8-19 秋の歌

今日は二十四節季の一つ「寒露」、朝露も一段と冷たく感じられ、秋が深まってくる頃。

朝晩の寒さが身に応えてストーブが毎日必要になってきています、時には気温が一桁にもなる。

白樺の葉は緑色、黄色、茶褐色になりヒラヒラと落ちてきて、葉が積もっている所もある。

その上を歩けばカサカサと心地よい音もするようになってきました。秋を感じる瞬間です。

チャイコフスキーの「秋の歌」という小曲があり、寺田寅彦は独り静かにレコードを聞いて幻想の世界にわけ入ったようです.........。


「北欧の、果てもなき平野の奥に、白樺の林がある。嘆くやうに垂れた木々の梢は、もう黄金色に色づいて居る。傾く夕日の空から、淋しい風が吹き渡ると、落葉が、美しい美しい涙のやうに降り注ぐ。

私は、杜の中を縫ふ、荒れ果てた小径を、あてもなく彷徨ひ歩く。私と並んで、マリアナ.ミハイロウナが歩いて居る。

二人は黙って歩いて居る。併し、二人の胸の中に行き交ふ想は、ヴァイオリンの宵になって、高く低く聞こえて居る。其音は、あらゆる人の世の言葉にも増して、遺る瀬ない悲しみを現はしたものである。

私がGの絃で話せば、マリアナはEの絃で答へる。絃の音が、断えては続き続いては消える時に、二人は立ち止まる。そして、じっと眼を見交はす。二人の眼には、露の玉が光って居る。........」

 


森の人