蓑虫の財布

最近、蓑虫(ミノムシ)を見かけるのがあまりない。
もう半世紀ほども前に、蓑虫で財布を作ってもらった。
あまり使っていないが、まだ大切にして持っています!

田舎育ちであったので、身の周りには沢山蓑虫があり簡単に集めることが出来た。財布を作ろうとすると沢山の蓑虫を集めなければならない。

物理学者「寺田寅彦」も蓑虫には関心があったらしくて、家の縁側で庭を眺めている時、眼に前に蓑虫がぶら下がっているのを眼にして、よくよく観察をしたようだ。

友人にハガキで早速その様子を次のように書いたようです。

「今僕の眼の前の紅葉の枝に蓑虫が一匹いる。僕は蟻や蜂や毛虫や大概の虫に就いて其の心持と言ったようなものを想像する事が出来ると思うが、此の蓑虫の心持だけはどうしても分からない」と。


清少納言枕草子に次のような事を書いてある。

「蓑虫の父親は鬼であった。親に似て恐ろしかろうと言って、親のわるい着物を引きかぶせてやり、秋風が吹く頃になったら来るよとだまして逃げて行ったのを、そうとは知らず、秋風を音に聞き知って、父よ父よと恋しがって鳴くのだ」。

このことは、自然界に対する日本人の知識が如何に長い間平和安泰であったかという事を物語っている、と寺田寅彦は書いている。

 


森の人